Ciatech創業者マルセロ・サトウ インタビュー
Part 2: 急成長の先に何があるのか?


ブラジル・ベンチャー・キャピタルの起業家インタビューシリーズ。

企業向けのエデュテックで大きく成長し、ブラジルのデジタルビジネス大手、UOLに高いバリュエーションで売却を果たしたCiatechの創業者、マルセロ・サトウ氏のインタビュー第二弾です。

ピヴォットを繰り返しながらようやくやりたかった事業領域で成長軌道に乗り始めたところで経営陣内でのビジョンの違いという問題に突き当ります。

 

Ciatechの成長

2000年と2001年はCiatechにとって大きく飛躍する年になりました。金融機関向けに様々な製品を供給するようになったのです。当時銀行が欲しがっていたのはカタログでも研修用のコンテンツでもなく、インターネットバンクのインストール用CD-ROMでした。ブラジルでもインターネットバンキングを普及させることで顧客が店頭にいく必要性を減らし、銀行のコスト削減につなげたいという流れが加速しつつありました。

さらに、当時は多くの人がインターネットに不馴れであったため、このCD-ROMにインターネットバンクの設定から利用までの手順をインタラクティブに説明する機能もつけました。このインストラクション機能付きCD-ROM商品は最初ウニバンコ銀行で採用されて成功を収めると、イタウ銀行、ブラデスコ銀行等々、続々と他の銀行からも引き合いがきて、Ciatechのヒット商品になりました。

ただ、当時のCiatechはインターネット企業ではなく、開発はすべてオフラインでしたし、製品もオフラインであることをベースに作られたものしかありませんでした。私たちはオフラインベースの商品からオンラインベースの商品へシフトチェンジをする必要性を感じ始めました。

しかし、問題だったのはクライアント側とは温度差でした。当時はまだインターネットのようなオープンなネットワークには懐疑的な見方もあって、イントラネットのような閉じたネットワークでのサービスを求められていたため、当面はイントラネット分野の開発を進めることにしました。そしてこの流れが、将来的にはオープンなオンラインサービスの開発につながることになります。

わが社の最初の成長時期がサンパウロ市内に越した後の2000年以降とすると、第二の成長時期はオンラインサービス事業に参入した2000年から2006年の頃と言えるでしょう。クライアント企業も徐々にオープンなインターネットへ様々なことを移行する時期がやってきます。

この頃、ナイキや大手タイヤメーカーのPirelliやContinental Pneus や、製薬会社や金融機関等の大口クライアントを次々と獲得し、会社は大きく成長しました。しかも多くのクライアントが「CD-ROMでのカタログで御社の仕事は大変気に入った。今度は完全にオンラインでカタログを作ってほしい」といって、先方から私たちを探して発注してくれるような状況でした。

このオンラインカタログの流れがやってきたときに、創業当時ボッシュのCD-ROMカタログを作った際に経験した失敗を反省し、同じ間違いを繰り返さないように注意しました。

ボッシュのCD-ROMを作成した当時は私たちだけではプロジェクトを完遂できないと考え、外部のパートナーと提携して開発することにしました。しかしこれは今振り返ると過去に犯した最悪の意思決定と言ってよいほど間違った判断でした。提携先の会社が期日になっても納品してこなかったのです。当初の計画に従って一か月も準備をしてきた私たちにとり大変厄介なことになったのです。

最終的には昼夜なく私たち自らが働くことでどうにか納めることができました。幸いにも何とか納品ができてクオリティとしてもクライアントに満足してもらえたので、その後もオートバイ用のタイヤ、自動車用のタイヤ、トラック用の製品と多くの依頼が来るようになりました。

こうしたプロジェクトはすべて社内で行う体制にしたので、マルチメディア関連の開発会社として高い評価を得ることができたのですが、やはり質の高い仕事をするためには重要な開発部分は内省すべきだという教訓を得ることになりました。

 

オンライン研修開発企業として

Ciatechの第三の成長期となったのは、ゼネラル・エレクトリックと契約を結んだ2006年で、消費者向けのカタログ作成のプロジェクト共に、オンラインベースの教育プログラムを扱いました。ようやく創業当時に考えていた研修そのものをメインに据えたプロジェクトに携わることができたのです。

遠隔地のスタッフにもリモートで研修を行うことができるコンテンツとシステムを提供したこのプロジェクトは8年間続きました。起業家は特定分野に集中すべきとよく言われることですが、実際にはわかってはいても実践は難しいものです。私たちも最初の10年間は求められたものをひたすら作っていたに過ぎませんでした。しかしようやくこうして会社の将来を考えるのに絶好のプロジェクトと巡り合うことができました。

オンライン事業にフォーカスするため、オフラインの開発業務については他のパートナー企業に引き取ってもらい、私たち自身はオフラインサービス事業から完全に撤退したのです。オンラインとオフラインの両方を抱えることは、コストが高すぎるため選択肢にありませんでした。

当時既にイタウ銀行やサンタンデール銀行を含む金融業界の大手企業とは一通り取引がありましたし、テレコム、保険、リテール、各種サービス業と既存顧客の業種も多岐に広がっていました。

この頃、企業研修に関するマーケット調査を行ったところ、多くの企業が研修に多くの予算を確保していましたが、研修予算の95%がオフラインの実地研修に充てられており、また、実地研修費用の80%が講師の交通費などのロジスティックにかかるものだったので、こうした経費が大幅に削減できるオンライン研修が今後の成長分野になると確信し、今後会社が進むべき道をオンライン研修に定めることにしました。

オンライン研修サービスのポテンシャルは非常に高いものでした。ブラデスコ銀行を例にとると、ブラジル国内に5000か所以上の支店を持っていたので、すべての窓口営業員にフェイストゥーフェイスの研修を施すことは費用的に考えて無理がありました。一方で、ブラジル政府の中央銀行は従業員が金融関連の最新の正しい知識を身に付けていることを要求していたわけです。オンラインで研修を行うこと以上の解決策がない状況で、私たちもこの事業の将来性の高さを強く確信していました。

 

パートナー間の不協和音

オンラインサービス参入後、同時並行する多数のプロジェクトの納期を守っていくことが非常に大きなストレスになっていきました。この業界では納期は絶対です。バグなどの問題があったからといって納期を遅らせることはできませんが、一方で納品した商品の問題が一度でも起こったら深刻な問題になりかねないので慎重に対処する必要がありました。

こうした過酷な状況ではありましたが、私とアレックスは会社が成長していく中で非常に高いモチベーションで仕事に取り組み続けていました。しかし対照的に、エウクリデスは創業から15年間続くハードワークを求められる環境に疲労を募らせていきました。

会社の収入が増えるにつれ、2010年には従業員も40人を数え、更に海外の投資ファンドから数億円単位の投資のオファーを受けるようになりました。こうした中で自然と出てくるのは「今後将来についてどのように考えるか」という、これまで考えもしなかった疑問です。

Ciatechは企業研修開発分野でブラジル国内で確固たるポジションを築きましたが、一方でブラジル内で唯一のライバル企業も著しく成長していたため、投資家からは将来に向けて新しい方向性を模索するようアドバイスを受けるようになりました。

この頃、ある投資会社からCiatechの100%完全に買収したいというオファーを受けました。エウクリデスはこのオファーを受けるべきだと主張しましたが、これまで一度も自分たちが作ってきたCiatechを売却することなど考えたこともなかった自分とアレックスは完全に反対でした。こうして事業のゴールについて見解の異なるパートナー間で最初の亀裂が生まれることになってしまいました。

 

CiaTech創業者マルセロ・サトウ
CiaTech創業者マルセロ・サトウ

マルセロ・サトウ(Marcelo Sato):
日系ブラジル人としてサンパウロに生まれる。サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市のFEI大学電子工学部在学中に時代にアレックス・モレノと出会い、2人で共同創業者としてシアテックを設立。現在は、ブラジルのベンチャーキャピタルのAstella Investimentoのパートナーを務め、革新的なITサービスへの投資を行う。ブルーノ、エミリー、ガブリエルという3人の子供の父親。

 

 

 

シアテック(Ciatech):
シアテックは1996年サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市にて創業。創業17年目で外部からの出資を受けずに年商4千万レアル(約14億円)を達成。創業当初はオフラインのサービスからスタートし、ブラジル国内のインターネット市場の興隆とともにオンラインサービスにシフトチェンジ。90年代終わりのインターネットバブル崩壊で多くのインターネット企業が倒産する中、Ciatechは生き残り。2013年、ブラジルの大手インターネット会社UOLがマーケットを上回る金額で買収。

 

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