Conta Azul創業者 ヴィニシウス・ホヴェダ インタビュー, Part 2


ブラジルの起業家に幼少期から成功までの道のりを語ってもらうブラジル・ベンチャー・キャピタルの独占インタビューシリーズ。

クラウド経理システムをブラジルで提供するコンタアズウ(ContaAzul)を立ち上げたヴィニシウス・ホエダ氏のインタビュー第二部です。コンタアズウはこのインタビューの直後、2018年の4月3日にUS1億ドルの資金調達も発表され、もうIPOまでカウントダウンという段階に入ったようです。

コンタアズウはブラジル企業として初めて500 Startupsのアクセラレーションプログラムに参加したスタートアップです。第二部ではコンタアズウの本格的な立上げから500 Startupsに参加するまでを語ります。

 

最初の失敗から得た教訓

コンタアズウの最初の商品は大きな失敗に終わりました。ほんの数人のクライアントから聞いたニーズをそのまま市場全体の絶対的なニーズだと思い込んでしまったことが原因でした。適切なリサーチや試験的なローンチを行わずに多くの時間をつぎ込んで商品をローンチした瞬間にわかったのはとても市場のニーズに合致したとはいいがたいプロダクトを作ってしまったいうことでした。何万という利用者を期待していたのですが、実際に販売できたのはたった2-3のクライアントでした。

また、その当時はブラジルではオンラインショッピングについて注目が集まっていたところで、いくつかの事業者が表れ始めたところでした。でもオンラインショッピングのマーケットは私達が提供するようなSAAS(software as a service)とは全く異なっるマーケットでした。今でこそSAASに関する様々な情報をネットなど簡単に得ることができますが、当時はそういった情報に触れることも難しかったので勝手に自分たちの思い込みをプロダクトにしてしまったのです。

こうして知識も経験も不足していた私達は販売・流通の面でも大きな問題を抱え、考えられるありとあらゆる失敗を経験したと言っても過言ではないと思います。しかし、希望を捨てずに失敗で得た経験を活かしてもう一度チャレンジすることで次は必ず違った結果に繋げられるという希望も意欲も持ち続けることだけはできました。

 

第二の創業と成長の中で感じる違和感

失望と希望の中、私とサルダニャは自分たちに似た境遇の起業家2人と出会いました。そこで、彼らと共に、付加価値の高いソフトウェア開発及びメンテナンスを行うべく新会社Infomantを設立しました。その頃にはクラウドに関する知識や経験には自信がありましたし、Tecnosystem社時代に築いたコネクションも含め十分なネットワーキングもできていました。新たに加わった2人も業界内のネットワークを持っていましたので、クライアント候補を紹介してもらうベースは十分にありました。

Infomantではクラウドソリューションも提供しましたし、クライアント独自のシステム開発も請け負いました。Grendene、Krotonといった大手クライアントの個別のニーズに応じるような請負業務も含めて、様々なプロジェクトを手がけました。2007年6月から2011年の9月までの3年間をInfomantに費やすことになるのですが、とても充実した日々を過ごしました。その間にInfomantは社員30名を超え、年商も数億円に達していました。人生の最高潮とすら思えた時期でした。

ところが、時が経つにつれ、自分の求めているものとは違うと感じ始めていました。自分達のモチベーションも満ちているし、社員も本当に真剣に高いレベルで頑張っていました。企業文化も自分たちの信念に基づいた素晴らしい会社を作り上げました。しかし、何かが欠けている感じがしてならなかったのです。私が求めていたのはスケーラビリティのある、世の中に大きなインパクトを与えるような事業を立ち上げることでした。頂点まで登り詰める様な事業ではなかったのです。誰もが憧れるような、言ってみればブラジル最大のソフトウェア会社を築くようなことが私の夢でInfomantでの成功とは違うレベルのものだったのです。

 

コンタアズウの復活

私が目指すべきものがより大きなものだということが明確になり、まだ市場にチャンスがありそこに向けてチャレンジする価値があると思ったので、2010年の年末にサルダニャと他のパートナーたちと集めて話し合い、そろそろ初心に戻る頃だと話しました。当時はブラジルではまだ中小企業の問題解決のための経営管理ソフトウェアに力を入れている者は誰もいませんでした。そのアイデアにもう一度賭け、ブラジル全土をカバーする販売網の構築にも取り組み、1年を費やし、30社ほどの販売パートナーを持ちましたが、結局、ほとんど売上が上がらず、今日のコンタアズウなら数時間で売れるようなボリュームにすらならない、厳しい数字しか上がりませんでした。またもや失敗に終わったのです。

この時、自分たちだけで全ての問題を解決するのは無理だと悟りました。ブラジルを出て最新の情報や知識を得る必要を強く感じていました。更に、本気で自分たちの目的達成を志してビジネスを続ける為には、資金が必要で会社の利益だけで補うには限界がありました。プロジェクトのアイデアは当初と同じく、中小企業の手に届く価格でソリューションを提供することを目指していました。しかしその為には私達が想像していた以上の資金が必要でした。投資家を探す時期に差し掛かっていました。

考えてみてください、ブラジルというたった一つの国に2千万もの会社が存在するのです。ヨーロッパは2千400万社、アメリカは2万9千万社です。コンタアズウがそのエリアで世界最大の会社になろうという野望を抱くには十分な数字ですし、私達はそれが可能だと信じていました。しかし、その為には正しいタイミングで素早く成長することで市場を抑えてしまう必要があり、金銭的な面での手助けが必須となっていました。もしかしたら最高の起業家は外部からの投資無しで大きな企業を作れるのかも知れません。しかし、誰もが投資なしで大きな事業を立上げられる訳ではないのです。その事を踏まえて、最初の何年かは会社の成長を優先して、投資をし続けるという決断をしました。

 

ブラジル初となる500 Startupsプログラムへの参加 

Tecnosystem社ではもう一人コンタアズウにとって重要な役割を果たす人物に出会ってました。当時同僚だったジョアン・アウグスト・ザラチネは後にコンタアズウ3人目の共同創業者となります。ジョアンは当時のブラジルのスタートアップのエコシステムの状況を理解するためにサンパウロに行きました。多くの他の起業家達に会って話すことで何かを学ぶことが目的で、あわよくばコンタアズウに面白いプロジェクトを持って来るつもりでもありました。

彼がサンパウロから戻って来た時、アメリカの三大アクセラレータの一つ、500 Startupsがサンパウロに来るので私達も会うべきだと言いました。私達はサンパウロに行き、他のスタートアップと一緒に自分たちのビジネスプロジェクトのプレゼンテーションをしました。中小企業向けの経営管理ツールを開発するコンタアズウは一緒にプレゼンテーションした他のビジネスに比べると「クール」ではなかったと思います。しかし、極めてポテンシャルの高い市場に着目していましたことが奏功したのか、500 Startupsは私達に興味をもってくれたのです。

こうして、コンタアズウは500 Satartupsから5万ドルの投資を得ると同時に、カリフォルニア・シリコンバレーで行われる500 Satartupsアクセラレータプログラムへブラジル初のスタートアップとして参加できることになったのです。喜ばしいことであったのですが、それと同時にプライベートでは娘が生まれたばかりだったので、そんな時期に家を4ヶ月間も空けるという、チャレンジングな決断を強いられたのです。ついこないだまで自宅のシャワーを修理していたのに、次の日には妻と子供を実家に引っ越させることになるという状況の変化に私自身、びっくりしていました。アメリカに行った後に何が起こるのか全く見当もつきませんでしたし、ものすごく上手く行くかもしれないし、思い切り失敗するかもしれないという強い不安を感じていました。

 

カリフォルニア、シリコンバレーでの生活

シリコンバレーを訪れた時には、自分たちでは既に商品は完成していると思っていました。しかし、500のプログラムの中でデザインとは何たるかを初めて本当に理解した時に、その時点で私達が開発したものは完成には程遠く、全くダメだと思い知らされました。

それから、最初の1ヶ月目は昼夜を問わず、ソフトウェアデザインのシンプル化に専念しました。2ヶ月からオンラインマーケティングに取り組みました。デジタル広告に出稿してどうなるかを見たり、SEO(検索エンジン最適化)なども含めて、多くの人々に商品を知ってもらうようにいろいろなトライアンドエラーを繰り返す中で、少しずつポテンシャル顧客に興味をひくことができました。このトライアンドエラーが徐々に実を結び始め、結果的に多くの人が私達のソリューションに興味を持ち始めました。

500 Startupsから出資を受けた5万ドルは全てこれらのマーケティング活動のトライアルにつぎ込みました。また、この期間を通じて、チームの中での役割分担ができるようになり、プロジェクトの足並みが揃い始めました。サルダニャはコンタアズウの商品であるソフトウェア開発、ジョアンはデジタルマーケティングを担当し、私はビジネスのビジョンを明確にして方向性を示す役割となりました。こうして、チームがうまく回り始めた結果、ようやく利益が入ってきました。

また、シリコンバレーに身を置くことで様々なことを学びました。どの様に大規模な流通網を構築するにはどうすればよいのか、スケーラビリティ高く成長するには何が一番重要なのか、膨大なデータ・情報がある中で会社はどういった指標を重視すべきか、など、インターネット企業に共通する様々な要素をアメリカのスタートアップと切磋琢磨しながら吸収していくことができました。

 

Conta Azul創業チーム
Conta Azul創業チーム

ヴィニシウス・ホヴェダ・ゴンサウヴェス:Vinicius Roveda Gonçalves 
コンタ・アズウ社の創業者件CEO。サンタ・カタリーナ州立大学コンピュータサイエンス学部卒業。
それまでは大手のシステム開発会社が大企業向けに個別に開発、販売していたビジネス管理ソフト市場に、シンプルかつ低価格でクラウドベースのソリューションを提供。中小企業経営者のニーズを踏まえたサービスとして圧倒的な支持を集め、ブラジル全土に展開し、大手企業に独占されていた市場で成功を収める。

 

コンタ・アズウ:ContaAzul
コンタアズウは2011年サンタ・カタリーナ州ジョインヴィレにてヴィニシウス・ホヴェダ、ジョゼ・サルダナ、ジョアン・ザラチネの3人で創業。中小企業向けオンラインの経営管理ツールを提供する。2011年にはアメリカ・シリコンバレーに本社を置く500Startupsのアクセラレーションプログラムにブラジル初のスタートアップとして参加。創業6年目にして100%に近い年成長率を誇っており、年内には社員300人、年商30億を超えると予想されている。ブラジルのスタートアップの中で最もIPOに近い企業と目されている。

  


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