2019年のブラジルのスタートアップシーンの展望

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ブラジルはギリギリ2018年なので今年最後のブログとして2018年を振り返りつつ、2019年のブラジルのスタートアップシーンの展望をまとめてみたいと思います。

まずは2018年を振り返りたいと思います。

大型Exitの始まり

2018年はブラジルのスタートアップシーンを一言で言うと「大型Exitが始まった年」でしょう。

ライドシェアの99が滴滴へ売却されてUS$1BとしてのユニコーンExitが話題になった1月、決済サービスのPagsegroのニューヨーク証券取引所に上場しました。更には教育系のArcoがNASDAQに上場し、それに続いて決済サービスのStoneのNASDAQ上場は今年のNASDAQ最大のディールとなり、一時期企業価値は約1兆円に迫るほどになりました。

これで今年はもう終わりかと思いきや、11月にはフードデリバリーのiFoodがUS$500Mの追加調達を受け、既にユニコーンレベルになっていることが公表されるという、ニュースの多い年となりました。

大型調達が国内で実現可能に

もう大型案件は出尽くしたかというまだまだそんなことはなく、100億円以上の投資を受けたスタートアップも既にユニコーンレベルにあった無店舗銀行のNubankのほか、同じく無店舗銀行のNeon Bank、物流シェアリングプラットフォームであるRappi(本社コロンビア)はUS$185Mの増資を行いユニコーンとなり、その競合のLoggiはソフトバンクビジョンファンドからUS$100Mを調達しています。数十億円レベルの投資を受けたところでContaAzul、QuintoAndarなどなどと、大型の資金供給量が増えています。

ベンチャーキャピタルを名乗るファミリーオフィス急増

ブラジルは現在公定歩合が6.5%です。日本からすると高いと感じるでしょうが、つい2-3年前まで14%台だったので激減です。この環境で大型Exitが増えてきたこともあって、ファミリーオフィスが続々と「××キャピタル」と名乗ってベンチャー投資を始めようとしています。ファミリーオフィスとは言え、結局大きなエンジェル投資家なので、本当にVC投資がわかっているのかどうかが疑問ではあるので資金を受けるスタートアップ側には注意が必要です。高宮さんの「投資家は資金以外で選ぶ」という金言をブラジルの起業家達にも伝えないといけません。

法律改正で企業のベンチャー投資へのベネフィット

この年の瀬に2つの重要な法律改正がありました。1つはLei de informaticaというIT企業を対象にしたもの、もう一つはRota 2030という自動車関連企業を対象にしたものです。どちらも、元々R&D投資をブラジル内で行うと節税効果が得られるようになっていたのですが、投資の範囲を自社のR&Dに留まらず、ベンチャー企業、ファンド等への投資によっても節税効果が得られるようになるものです。

試算ではLei de informaticaだけで年間500億円程度がベンチャー投資に向けられる可能性があるということです。これは現状のベンチャー投資額を50%程度押し上げる効果になります。しかも毎年ほぼ確実に流入してくると言える金額です。日本勢で対象になりそうなのはソニーくらいでしょうか。ただ、年末に発表されたRota2030は自動車関連メーカーにも恩恵を与えています。トヨタ、ホンダ、日産、ヤマハなどの皆さんにぜひ頑張ってほしいです。

なぜならLei de informaticaで恩恵を受けるのはSamsungです。Samsungが直接間接に関わらず多くのブラジルのスタートアップに資本参加しそうだという大きな話しではあります。国対国の競争を考えるとブラジルのスタートアップをSamsungをはじめ、LG、Hyundai、Kiaといったところに牛耳られてしまうリスクがあることを意味しています。

さて、こうした背景を踏まえて2019年はどんな年になっていきそうかを考えてみたいと思います。

ベンチャーの資金調達時の企業価値の上昇

単純に資金流入が増えるので高いバリュエーションでも資金調達ができる可能性が高まります。特に上述のファミリーオフィス系なセミプロぐらいの投資家によって甘い投資が増える可能性があります。

ブラジルのスタートアップの資金調達時のバリュエーションはUS、日本に比べてまだまだ低いので、一定の上昇は健全なエコシステムの熟成ではありますが、一部の目立つ大型Exitがあるだけで、全体で見て平均的にExitの時の投資家のリターンが増えているわけではないので、注意が必要です。

大型の資金調達を行ったスタートアップによるスモールExit急増

供給過剰で起きるもう一つの方向性は、実績のあるスタートアップへの投資集中です。実際100億円単位の調達を行った冒頭にあげたいくつかのスタートアップはなかなか資金を自社での成長だけには使いきれず、小規模でのM&Aを多数行うことでプロダクトラインを広げたり雇用を目的としたM&A等に動いている状況を目にするようになりました。

また、特にUSでピークアウトが起きてしまうと市況が良くなるまで上場を待てるスタートアップが増えるのでこの傾向は加速する可能性があります。

骨太の連続起業家誕生への期待

率直なところ、ブラジルの起業家の多くは個人のお金がモチベーションです。M&AでのスモールExitも多いですし、Exit後はセミリタイヤしてしまうのでシリアルアントレプレナーがまだ希少な状況です。ただ、今後Exitする起業家が増えてくると2度目3度目と、大きな勝負に出る起業家が出てくる土壌ができてくる年になると思います。もちろんM&A後のロックアップがあるので実際に出始めるのは2-3年後ではありますが。99の創業者の一部がYellowというシェアバイク事業を始めたりと、流れが変わるきっかけは見えつつあるように思います。

さて、偉そうに大上段からコメントしてしまいましたが、自分事も振り返りたいと思います。

投資先が順調に成長し、更なる資金調達を受ける

2018年はブラジル・ベンチャー・キャピタルにとって投資先の成果が出始めた年でした。シード投資が中心なのでExitまでは時間がかかるのですが、いくつかのスタートアップが弊社投資後の次のステップとしてシリーズA等での投資を受けたり、企業らの戦略投資を受けています。

ジャパンアングルも芽が出始めている

ブラジルと日本が遠いために、いつもブラジルのスタートアップが日本に行くことなどあり得ないと言われてきました。しかしながら、投資先のMediarはプラグ・アンド・プレイ・ジャパンに採択され、日本市場進出の第一歩を歩み始めています。まだ公にできないですがもう一社持っていく仕込みを続けている投資先がありますので、来年は日本でブラジルのスタートアップを見聞きする機会が多くなるかもしれません。

マーケティング活動の強化

2018年は投資活動以外に弊社自体、ブラジルのスタートアップエコシステムを知ってもらうべく、マーケティング活動を強化した年でもありました。

  • 日本向けブラジルスタートアップセミナー:西村あさひ法律事務所、01Booster、WAOJE―日本人起業家団体の世界大会
  • 日本経済新聞にブラジルエコシステムを紹介する記事を掲載
  • 「中小企業経営者が海外進出を考え始めた時に読む本」出版
  • ブラジルでも大手法律事務所のPinheiro Netoのイベントに登壇
  • WAOJEのサンパウロ支部を立上げ
  • ブラジルと日本を繋ぐ史上初のスタートアップ関連イベント「第一回ブラジル・ジャパン・スタートアップフォーラム」を主催

2019年も引き続きマーケティング活動を強化して参ります。まだ公表できないものもいくつかありますが、

  • 第一四半期にはブラジルの起業家関連の書籍の出版決定
  • その他スタートアップ関連の書籍・レポートも複数準備
  • ICCサミットFukuoka(2月)に登壇
  • WAOJE各種イベントで登壇
  • 9月27日にサンパウロで「第二回ブラジル・ジャパン・スタートアップフォーラム」の開催

さて、こうした振り返りで頭の整理はしたものの、結局は一つ一つ丁寧にしっかりやっていくしかないと思っています。

私自身、一人の起業家としてブラジルの起業家、日本の皆さんに刺激を受けながら少しずつ成長していきたいと考えております。

ということで2019年もよろしくお願いいたします。


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