ドローンファンドがブラジルの農業系ドローンスタートアップARPACへ出資実行


弊社Brazil Venture Capitalも出資するARPAC (ブラジル発の農業系ドローン開発ベンチャー)がブラジル国内5拠点の事業拡大に向け、日本のドローンファンドを中心に追加資金調達を行いました。

http://www.arpacbrasil.com.br/

*日本での報道はこちら→https://www.drone.jp/news/20191009160052.html

*ブラジルの現地有力経済メディアEXAMEでも報じられています→https://exame.abril.com.br/pme/startup-de-drones-na-agricultura-recebe-aporte-milionario/

ARPACの歩み

ARPACは、創業者であるEduardo Goerlが、自らの商業パイロットとしての経験を基に、農業飛行の危険性や農薬散布の非効率性といったペイン・ポイントを解決すべく、2016年に創業しました。同社は、ハードウェア (ドローン) に加え、ソフトウェア (ドローン飛行のコントロールシステム)、およびフレームワーク (ソフトウェアの基幹コード) を所有しています。BASFはじめ、Coopercitrus、Raízen、Syngentaといったグローバル企業に対し、ドローン運用のヘクタール辺りの課金体制にてサービスを提供しています。

Eduardo Goerl
ARPAC創業者Eduardo Goerl

 

なぜドローンでの農薬散布が優れているのか?

農地の広大なブラジルでは大規模農法が進んでいて、飛行機での農薬散布が一般的に行われています。またトラクター等を使った大規模な農薬散布も当然行われています。ドローンによる農薬散布が効果を発揮するパターンはいくつかありますが、ARPACが現時点でフォーカスしているのは「スポット散布」「傾斜地での散布」「益虫散布」です。

例えばサトウキビ畑では雑草が「木」のレベルで生えてしまい、収穫時に邪魔になります。この雑草に農薬を散布したいのですが、飛行機ではピンポイントで狙い撃ちをした散布ができません。これまでは人力に頼っていましたが、サトウキビは高さが3メートルにもなり、散布地までは文字通り林をかき分けていくことになります。効率も悪いですし、途中でコブラやイノシシに出くわすという危険も伴います。ドローンなら地図上で散布ポイントを複数個所マッピングするだけで自動パイロットで順次散布してくれます。

ブラジルのサトウキビ畑
ブラジルのサトウキビ畑

 

コーヒーの農地は日本の茶畑のような傾斜地です。飛行機は地面と水平に飛行するため、山の上部と下部で散布濃度が異なってしまうため、飛行機での農薬散布は限界があります。またサトウキビや大豆などの畑よりも小規模なこともあり、こちらも人手での散布に頼っています。こちらもドローンで細かく散布できることで大幅な効率改善が見られます。

ブラジルのコーヒー畑
ブラジルのコーヒー畑

最後の例は益虫の散布です。ブラジルでも化学農薬を減らす研究は盛んです。そのため、害虫を駆除のために益虫の卵を散布したいのですが、これも飛行機では風で飛んでしまうため、散布が難しい状況です。ドローンのように低空飛行ができることで効果的な散布が可能になります。

なぜARPACが優れているのか

ドローンの最先進国が中国なのはこの業界の常識です。ブラジルにも中国製のドローンがたくさん入ってきています。ただ、ブラジルに対しての顧客サポート体制がほぼない状況です。中国のドローンメーカーにとってマイナーかつ遠い市場であるブラジルのために担当者をブラジルに置くことはなく、また現地代理店が顧客のクレームを中国本社に出しても対応されることは皆無と聞きます。

また、ドローンを飛ばすだけなら比較的簡単ですが、農薬や益虫散布となると散布のスプレイヤー等のアプリケーターの開発までは中国メーカーはやりません。散布のオペレーションも総重量制限から来るバッテリーと農薬の最適なミックス、言い換えれば飛行時間、飛行距離、散布する農薬量の最適値を状況に合わせて対応するといった業務効率が非常に重要になります。こうしたきめ細やかな対応を顧客ごとに行えるサポート体制とエンジニアリング力を持ち合わせた会社はブラジル内にはほとんどありません。事実、ARPACのもとには「中国のドローンを買ったんだけどうまく飛ばなくて困っている」という相談が多数寄せられています。

 

ブラジルの農業概況

以前のブログでもご紹介した様に、未開拓含む広大な農地面積や先進技術などが示す様に、ブラジルにおける農業ビジネスのオポチュニティは、世界屈指であると考えられます。ブラジルの農業市場規模は、GDPの約15%にあたる700億ブラジル・レアル (1,600億米ドル、1.8兆日本円相当) に達し、現在では300社以上のアグリテック・ベンチャーが資金調達に成功し、創業しています。

*弊社によるアグリテック関連記事はこちら→
ブラジルのアグリビジネスに注目すべき5つの理由

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農業情報設計社によるブラジル市場への参入

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日本のアグリテック企業によるブラジル・アグリショー訪問記

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農業系ドローンのポテンシャルと、アグリテック全体の持続性

MarketsandMarketsの調査によると、今後5年間の世界市場成長率(CAGR)について、農業系ドローン市場では31.4%との見通しがあります。アグリテック全体では今後4年間のCAGRが12.4%と推定され、衛星データ、リモートセンシング、精密農業、自動化、農業経営管理といったポートフォリオがある中、ドローン分野のポテンシャルの高さが読み取れます。

また、Mordor Intelligenceによれば、農業系ドローン業界の競争度は、”mostly fragmented”と評価され、世界的なプレイヤーは不在で、スタートアップにも市場シェアを伸ばす余地が残されています。さらに、国連のSDGsでも提唱される食糧難問題といった社会的な側面も考慮すると、アグリテックへの需要は一過的ではないと見込まれます。

*参照はこちら→
https://www.marketsandmarkets.com/PressReleases/smart-agriculture.asp
https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/agriculture-drones-market-23709764.html
https://www.mordorintelligence.com/industry-reports/agriculture-drones-market
https://sustainabledevelopment.un.org/sdgs

 

ブラジルと海外市場のシナジー

ブラジル発のアグリテックは、ブラジルで蓄積した先進的かつ汎用的な農業技術、成功体験をアドバンテージに、(競争の比較的少ない、または補助金等の優遇措置のある)諸外国に早期に進出していくことも、成長戦略の一つとなりえます。

一方で日本は少子高齢化社会の影響により、就農人口も枯渇していることを背景にアグリテックが発展しています。しかしながら国土面積はブラジルの約4%と小さく、ポテンシャルが限られます。ブラジルの様な農業大国に日本発のアグリテックスタートアップ企業が参入する余地が存在すると考えられます。北海道発のアグリテック農業情報設計社 (AID) がブラジル進出を果たした様に、日本発のスタートアップのブラジル進出や、日本のベンチャーキャピタルによるブラジル関連の投資も、今後増えて行くことが期待されます。


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