News | 世界第3位のシェアリング電動スクーター企業Growがブラジル事業見直しへ

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ニュース要旨

世界第3位のシェアリング電動スクーター企業であるGrowは、ブラジル事業を見直し、主要3都市を除いてサービスを停止する事を発表しました。

同社は、再編の目的として「安定的、効率的、安全な方法でサービスを提供し続けるため」と説明しています。

シェアリング電動スクーター事業が南米およびブラジル市場で成長を遂げる中でのGrowの事業再編。今回のブログでは、これが何を意味するのか、考えてみたいと思います。

今回のニュースの着目すべき4点

  1. 大手競合他社のLimeも先月にブラジル事業撤退を発表した事。
  2. シェアリング電動スクーター市場はブラジルでも高い成長ポテンシャルを示す一方で、高い運営コストが足かせになっている事。
  3. UberはGrowのおよそ半額でブラジル市場に参入し、競争が激化している事。
  4. マイクロ・モビリティの社会的意義を訴求した、自治体との連携にも余地がある事。

会社概要とCEO略歴

Yellowの自転車とGrinの電動スクーター

自転車や電動スクーターのシェアサービスを展開するブラジルのYellow社と、電動スクーターを製造するメキシコのGrin社が2019年に合併し、Grow社が創立しました。ソフトバンクによるUS$150Mの投資報道もありました。時価総額はポストでUS$700Mの見通しとなっています。

サービス概要として、自転車や電動スクーターのドックレス方シェアサービスを展開しています。ラテンアメリカの7ヶ国で13万5000台の車両を展開し、2018年10月から2019年3月までの半年間で270万件の乗車回数を記録しました。昨年にはフィンテック企業も買収し、決済システムの強化にも余念がありません。

GrowのCEO Sergio Romo氏

CEOのSergio Romoは、White & Caseで様々なM&A案件等に携わり、その後、2010年に食品デリバリーのMiordenを創立し、2012年にはスペインの target=”_blank”SinDelantalへの売却を果たします。以降は、Rappiをはじめとするアーリーステージのベンチャー60社程に投資をし、およそ100社のメンターも務めるなど、各業界に精通しています。2018年にGrinに入社し、Yellowとの合併後、Growの代表を務めます。

事業再編の詳細

十分な収益が見込まれるサンパウロ、リオデジャネイロ、クリチバの3都市を除き、サービスの提供を停止します。リストラ対象となる従業員に対しては、労働法を遵守しながら、転職も斡旋する考えです。

シェアリング電動スクーター市場

マッキンゼーの調査によると、2015年以降、シェアリング電動スクーターをはじめとするマイクロ・モビリティ分野への投資額はUS$5.7Bにのぼり、そのうち85%は中国事業が占めます。グローバルの市場規模は、北米、欧州、中国の3地域で、2030年までにUS$300~500Bにも到達する見通しです。南米市場では、公共交通機関にアクセス可能な人口は現在10%ほどに留まります。ブラジルでは、サンパウロやリオデジャネイロ市内では、通常のおよそ+75%の移動時間がかかります。これらの試算も示す様に、環境破壊はもちろん経済損失の面からも、南米やブラジルでシェアリング電動スクーターが果たす役割は確かです。

なお、収益構造モデルは下記の図の通りです。電動スクーターの購入費用が一台US$400、一日5回の乗車を前提とすると、損益分岐点はおよそ4ヶ月後となる試算です。

シェアリング電動スクーターの収益構造 (マッキンゼーによる試算)

ブラジル事業再編の裏側 | 高運用コストと新規参入による競争激化

米国発のLime

前述の通り、「安定的、効率的、安全な方法でサービスを提供し続ける」ことが再編の目的とされていますが、実際には、高い運用コストも影響しているようです。

実際に、主要ライバル企業である米国発Limeは、累計でUS$455Mもの資金を調達し、月間のトップラインも+20%と順調に推移する一方で、修理・メンテナンス費用が嵩み、トータルでは赤字に陥っています。これはGrowはじめ同業他社にも当てはまるでしょう。結果として、Limeはブラジル市場参入からわずか半年で撤退を決めました。

加えて、ブラジルでは、昨年末にUberがシェアリング電動スクーター参入を発表し、競争が激化していく見通しです。資金力とスケールメリットを後ろ盾に、Uberの解錠額は一回あたり1.5レアルと、Growの同3レアルに対して明らかな価格競争力を見せます。加えて、大手スポーツ用品店と提携し、Uberのスクーター利用者に対してヘルメットを40%の割引価格で販売するなど、周辺ビジネスの囲い込みにも抜かりがありません。さらに、ブラジルからの撤退を決めた上述のLimeは、Uberと資本提携を結んでいます。シェアリング電動スクーター市場は、成長の旨みをもつ一方で、こうした高い運用コストと新規参入といった2重苦も抱えています。

Growのニュースからの示唆

シェアリング電動スクーター分野では、「モノ」を所有・運営することから、管理費用が嵩みます。サービス自体による差別化の余地も微小であることから、こうしたコストをどのように効率化および最小化出来るかが、各社にとっての生き残りの鍵となりそうです。

また、スペイン・バルセロナでは、自治体が主体となり、シェアリング電動自転車サービス (ドックあり方式) を提供し、地元市民や観光客による利用が増加傾向にあります。渋滞緩和や環境保護といった社会的な側面でもメリットが大きいため、各社にとっては、自治体を巻き込みながら事業展開する事も戦略の一つになるかもしれません。

ソース

https://www.time24.news/2020/01/grow-announces-restructuring-in-brazil-and-temporarily-removes-yellow-bikes-from-circulation.html
https://labs.ebanx.com/en/news/business/uber-scooters-brazil/
https://www.time24.news/2020/01/giant-of-scooters-lime-closes-operation-in-brazil-after-six-months-link-2.html
https://www.mckinsey.com/industries/automotive-and-assembly/our-insights/micromobilitys-15000-mile-checkup

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