フォーラム便り vol.15 | Agronow, Peter Werny 氏

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フォーラム便りvol.1では、フォーラムの全体像と、ブラジルベンチャーキャピタルによるOpening Remarksを取り上げました。 vol.2以降は、全18セッションの模様をシリーズでお届けして参ります。 今回は、AgronowのPeter Werny氏による「ブラジルのアグリテック」のセッションをご紹介します!

Agronow社 Peter Werny氏 (写真右)とブラジルベンチャーキャピタル 中山

セッション要旨

これまでのフォーラム便りでは、農業系のドローン分野のARPAC社HORUS社、農場マネジメントソフトウェア分野のAegro社など、アグリテック関連のセッションについてご紹介してきました。

今回は、上記3社と共にブラジルの農業を衛星技術の面から支えているAgronow社のChief Commercial Officerを務めるPeter Werny氏に、同社の技術力での強みや実績、ブラジルの農業が抱える課題などについてお話し頂きました(同社CEOのRafael Coelho氏がご登壇予定でしたが、変更となりました)。

会社概要

Agronowは、衛星画像による農作物の管理システムを提供するスタートアップです。農業ビジネスのサプライチェーンを情報技術で支えるべく、2015年にブラジルで創業しました。累計の資金調達額はおよそUS$2.5Mにのぼります。独自の作物データを通じて、統計的に信頼性の高い分析を提供します。3日ごとに作物を追跡し、作物の不足、収穫品質、その他の重要な変数などの収穫アラートを受信できます。

CEOのDusso氏は、以前は、スイス・ジュネーブのLDCにてコモディティトレーダー、ブラジル地域のコーヒー研究を担当していました。また、W7 ベンチャーキャピタルファンドの創設者であり、6年間マネージングパートナーを務め、11社に投資しました。ブラジル最大のベビー用品eコマースであるBaby StoreのCEOとしても、同社の再編プロセス全体を指揮し、さらに、Insper Angelsの創設者兼エンジェル投資家でもあり、Insper Entrepreneurship Centerのアドバイザーも担当した経験を有します。Insper-SPおよびマドリード・カルロス3世大学で経営管理の学位も取得(TMAによる事業再生管理を専攻)し、Agronowの事業セグメントについて高い見識があります。今回ご講演頂いたWerny氏も、Alibabaグループなどでキャリアを積み、テクノロジー分野に精通しています。先日のブログで紹介したSP Venturesの投資先でもあり、Aegro社やHorus社と並んで、SP Venturesの「ポートフォリオ内の企業のそれぞれの得意分野を組み合わせて、スマートな農業を実現する」という使命の一翼を担います。

AgronowのビジネスはBtoB、およびBtoBtoCの形態をとり、主な顧客にはサトウキビ生産者、農薬会社、農業保険会社、物流会社、監査法人、金融機関、その他生産者などが含まれます。

Agronowのチーム

今日の農業データ分析の問題点

Werny氏は、農業のデータ分析について主に3点の課題があると説明しました。Aegro社のセッションでもお話が合ったように、こうした課題を抱えつつ、特に中小農家は「勘」でのオペレーションを続け、結果として生産性がますます低下しているという悪循環に陥るリスクがあります。

① 生育履歴

過去の生育データや気象条件のデータの蓄積がない。いつ何をどれだけどうやって植えたか記録がない。

② モニタリング

生育状況が把握できない、病害にいち早く対応できない、在庫が分からない、栽培面積が分からない。

③ マクロ地域での生育トレンド

どこに何を植えるのが最適か分からない、他地域での課題が共有されない、収穫・収益見込みが分からない。

衛星画像による農場管理

上述のような課題を解決すべく、Agronowの提供するサービスでは、衛星及びレーダーからの画像分析によって、悪天候時でも、作物の生育や収量の予測、およびモニタリングを可能とします。これには、放射分析や熱力学のデータに基づいたアルゴリズムなどが組み込まれています。さらに、多重画像分析とディープラーニングにより、農場のセグメンテーション、作物の認識、収穫ペースの把握といった高機能を備えています。

4つのテクノロジーを組み合わせたAgronowの衛星画像ソリューション

Agronowの事業セグメント

同社のソリューションは、大きく分析、モニタリング、観察に分類され、作物では大豆、コーン、ユーカリ、サトウキビ、農地では牧草地や自然林などを対象としています。

① 分析:植え付け前のリスク評価

Agronowのシステムは、バックグラウンドチェックのために、公的機関のシステムとも紐づいており、それら農家が適正な運営を行っているか確認する過程でも重宝します。さらに、Agronowのプラットフォームには平均の収量や歩留まり、受付と収穫の履歴、作物認識、パフォーマンス評価、リスク評価、気候条件といったデータを管理・蓄積する機能があります。

② モニタリング:生育状況の把握

モニタリング分野では、生育状況の把握、生育および収穫のアラート、収穫のペースなどを管理できます。例えば、指定したエリアの面積はいくらで、何%が収穫され、歩留まりはいくらで、合計の収量見込みはいくら、といったデータが一目で分かります。現在では、同社のモニタリングは450Mヘクタール以上(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア)をカバーしています。

③ 観察:マクロ地域の生産トレンド

例えば、サトウキビが植え付けられたエリアの面積を定量化およびマッピングします。そして、収量の多い地域と少ない地域の気象条件の違い、農場・地域ごとのサトウキビの生産指数、農地使用の変化やトレンドの分析などについてデータを提供します。加えて、クラスター分析によって、保険会社や信用機関、投資機関に対し精度の高い情報を提供します。これにより、地域ごとの農業の生産性が比較でき、気候変動による影響なども考慮することができます。

各界のビジネスパートナー

前段ならびに先日のブログでもご紹介したSP Venturesは、ラテンアメリカにおけるアグリテックのVCの先駆者であり、同社代表のFrancisco Jardim氏も、Agronowの衛星画像ソリューションと他のアグリテックの技術を組み合わせた農業の改善に大きな期待を寄せます。

他には、BTG Pactualはラテンアメリカ最大の投資銀行であり、各国に強力なネットワークがあります。Family Officeは農業ビジネスおよび金融の専門家によって形成され、ブラジル北東部のバイーア州における綿、大豆、コーヒーなどの生産を管轄しています。SVG Partnersはアグリテックのアクセラレータ大手のThriveのオーナーであり、Agronowのような持続可能なテクノロジーで社会を変えるスタートアップを支援しています。

ビジネスパートナーの一例

おわりに

Agronowは、アグリテックのスタートアップとして「農業そのもの」の課題解決に挑むのはもちろん、そこに留まらず、その農業周辺を取り巻く金融機関や投資家、保険会社、その他公的機関などへのベネフィットにも着目した点が興味深いと言えるでしょう。SP Venturesも、アグリテックに特化したVCでありながらも、農業ビジネスを取り巻く金融も重視し、フィンテックへの投資も行っています。今後は、同セクター内でのオープンイノベーションに限らず、両社の取り組みにみられるような、「〇〇テックといった垣根を越えた事業を開発」にも注目したいと思います。

Werny氏の紹介

ドイツ生まれ。Aegro社のChief Commercial Officer。収益成長、戦略的計画、マーケティング戦略の開発、コスト削減、プロジェクト管理などを担当。過去4年間、Day Brasil S / Aにビジネスユニットを導入し、引き続いてブラジル全体のリセラー/ディストリビューターを開発し、60以上のビジネスパートナーと提携。2011年には、ブラジル全土の石油および標識業界向けのLED製品の開発も担当。

示唆に富んだ貴重なご講演を有り難う御座いました!

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