フォーラム便り vol.16 | Omie, Fabio Flaksberg 氏

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フォーラム便りvol.1では、フォーラムの全体像と、ブラジルベンチャーキャピタルによるOpening Remarksを取り上げました。 vol.2以降は、全18セッションの模様をシリーズでお届けして参ります。 今回は、OmieのFabio Flaksberg氏による「ブラジルのフィンテック」のセッションをご紹介します!

Omie社のFabio Flaksberg氏 (写真右)とブラジルベンチャーキャピタル 中山

セッション要旨

これまでのフォーラム便りでは、日本のベンチャーキャピタルおよびスタートアップ、そしてブラジルのベンチャーキャピタルおよびアグリテックについてお伝えして参りました。

今回からは、4社にご登壇頂いた「ブラジルのフィンテック」のセッションを振り返ります。まずは、中小企業向けのプラットフォームを通じてERPシステム、起業家の学習、さらに金融サービスを提供するOmieです。Chief Operative Officerを務めるFabio Flaksberg氏をお招きし、同社の起業からの経緯や、ブラジルの中小企業が抱える悩みをどのように解決してきたのか、語って頂きました。(同社CEOのMarcelo Lombardo氏がご登壇予定でしたが、変更となりました)。

会社概要

Omiexperience(Omie)は、2013年にブラジル・サンパウロで創業した、中小企業向けのクラウドERPおよびCRMを開発するソフトウェア会社です。中小企業と会計士は、共通のプラットフォーム上でやり取りをすることも可能になり、大幅な業務効率化に貢献しています。Omie.FITOmie.StoreOmie.SmartOmie.AcademyOmie.CashOmie.Venturesといった事業セグメントがあります。累計の資金調達はUS$27.5Mにのぼります。2018年には、先日のブログで紹介したAsstella InvestimentosからもシリーズAでUS$6.7M、昨年にはRiverwood CapitalからシリーズBでUS$20Mを調達しました。また、2018年にはブラジルの大手メディアExameとデロイトのコンサルタント会社による、「ブラジルで最も急成長している企業100社」の総合3位に選ばれました。

CEOのLombardo氏は、2000年から13年間、ブラジルのNewAge Softwareで、ERPやCRMのアプリ開発や、マーケティング、事業開発などを担当しました。テクノロジー分野から経営まで、幅広い見識を有します。同社でのキャリアを経て、2013年にCEOとしてOmieを設立しました。今回ご講演頂いたFlaksberg氏はCOOとしてOmieのオペレーション分野を支えています。起業家やエンジェル投資家としてのキャリアを有し、ブラジルのFGVビジネススクールではアントレプレナーシップ分野の科目で教鞭をとるなど、豊富な経験を有します。

Omieのチーム

今日のブラジルの中小企業が抱える課題

Flaksberg氏は、セッションの冒頭でブラジルとアメリカの中小企業のギャップに触れました。なんと、アメリカの中小企業の年平均売上高がUS$182Kであるのに対し、ブラジルでは同US$37Kと、6倍近い差が生じているそうです。なぜこのような差が生じるのか?Omieは、以下三つの点に着目しました。

① 経営と法令順守

ブラジルでは企業経営に関する条例や法令が複雑であり、特に中小企業にとっては、法令を遵守しながら事業を成長させることはハードルが高いそうです。

② 起業家の学習

ブラジルの起業家は、マネジメントに関する見識を欠いていることが多く、それを学ぶ機会すらもないことから、誤ったマネジメントをしてしまう恐れがあると見られています。

③ 金融サービスへのアクセス

ブラジルでは、特に中小企業は融資やその他金融機関によるサービスへのアクセスが制限されています。融資を受ける場合には、長い時間がかかる上に高い利率を突き付けられ、経営を揺るがしかねません。

Omieが提供するソリューション

上記3点のペインポイントを解決すべく、Omieは中小企業向けのプラットフォームを開発提供しています。具体的には、下記のサービスに集約されます。

① ERPソフトウェア

生産や在庫の管理、請求書発行といったあらゆるビジネス・プロセスや税務会計などを、統合されたプラットフォーム上で行えるようになります。このソフトウェアを通じての会計士とのやりとりも可能になり、大幅な業務効率化を実現します。

② 起業家の学習機会

「Fly」上で、マネジメントに関する学習コンテンツを利用することができます。

③ 金融サービス

ERPシステムと連動して金融サービスにアクセスすることが可能になります。ユーザーエクスペリエンスを重視した設計となっています。

Omieの提供するソリューション(イメージ図)

数字で見るOmie

ブラジルの中小企業が抱える悩みを的確に捉えたOmieのソリューションは、数字で見ても、顧客から高く評価されています。同事業では最優良レベルの1.7%の月平均解約率、US$1.25Bの月電子請求書発行額、98%の顧客満足度を誇ります。

Omieの高い顧客満足度

Omieのマーケティング戦略

Omieの強みは、テクノロジーに限りません。同社はマーケティング/チャネル戦略でも競争優位を築いています。販売体制として、数百万社の中小企業とパイプを持つおよそ65,000との会計事務所とパートナーシップを結びます。その後、各会計事務所の顧客に対し、個別またはフランチャイズ方式でアプローチします。最終的にOmieのシステムが導入されたあと、、中小企業と会計事務所でそれぞれトレーニングを実施し、およそ80%の業務削減に貢献しているそうです。この顕著なコスト削減実績が、上記のような低い解約率に繋がっています。Omieにとって会計事務所は「セールスのハブ拠点」として、多数の中小企業にアプローチする重要な役割を果たしています。

Omie.Cashの事例

前述のように、中小企業と金融機関の支払い、融資その他金融サービスには非常に時間及び金銭コストが発生しています。2016年以来、Omieはユーザーによる売掛金の円滑な前受などをサポートしてきました。この期間に、ユーザーにとってどのような金融サービスを提供すべきか検討がなされました。そして、Omie.Cashが2019年8月に導入され、ERPシステムに組み込まれた初の「デジタル銀行」サービスとなりました。ここでは、Omieは支払いや入金などの銀行のサービスを代行し、中小企業の資金運営をスムーズにしています。

今後4年間の成長見通し

2019年には新たなフランチャイズモデルを導入し、主にOmie.Fit事業や金融サービス分野の拡大を図りました。2020年には金融関連をさらに強化し、2023年には、2019年対比で経常収益で12.7倍、顧客数で19.2倍の高い成長を見通しています。

おわりに

Omie社のビジネスから学べることは、ユーザーの痛みを的確に捉えたソリューションの提供はもちろん、「どう売るか?誰を通じて売るか?」というマーケティング戦略も肝心だという点でしょう。昨年に参加したフィンテックのイベントで各社に話を伺った際も、「技術的には各社でそれほど大差はない。一方で、どう売るかが問題だ」という問題意識が異口同音に聞かれました。単純に「どんどん売る」のではなく、Omieのケースでいえば会計士という、エンドユーザーと密接した関係者を起点に販売することで、ハブ&スポークの理論で効率性は高まると期待されます。スタートアップの事業を見極める上では、テクノロジーの強みはもちろんですが、それを世に届けるためのマーケティングの戦略にも目を向けたいと思います。

Flaksberg氏の紹介

OmieのCOO、起業家、エンジェル投資家、およびシードステージのスタートアップ・アドバイザー。GVAngels(FGVのエンジェルグループ)のディレクター、および選考委員。SPStars(サンパウロ)とHackBrazil(ブラジルのハーバードおよびMIT)のメンター、FGVのイノベーションとアントレプレナーシップの教授も兼務。 ジョージタウン大学(ワシントンDC、米国)McDonoughビジネススクールでMBA、FGV-SPで経営管理、PUC-SPで法学の学位を取得。

示唆に富んだ貴重なご講演を有り難う御座いました!

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