フォーラム便り vol.19 | Lupeon, Jose Abreu 氏

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フォーラム便りvol.1では、フォーラムの全体像と、ブラジルベンチャーキャピタルによるOpening Remarksを取り上げました。 vol.2以降は、全18セッションの模様をシリーズでお届けして参ります。 今回は、LupeonのJose Abreu 氏による「ブラジルのフィンテック×物流」のセッションをご紹介します!

Lupeon, Jose Abreu 氏 (写真右)とブラジルベンチャーキャピタル 中山

セッション要旨

第二回ブラジル・ジャパン・スタートアップ・フォーラムではブラジルのベンチャーキャピタルやアグリテック、フィンテックの分野からゲストをお招きしました。今回は少し視点を変えて「フィンテック×物流」分野に焦点を当てます。ご紹介するのは、物流管理のプラットフォームを通じた、荷主(Shipper)と配送業者(Carrier)間の効率的な連携を支えているLupeonです。CEOを務めるJose Abreu氏をお招きし、ブラジルの物流業界の現状やLupeonのソリューションと実績、今後の成長戦略などを語って頂きました。

会社概要

Lupeonは2015年にブラジル・サンパウロで創業しました。同社は、物流、財務、およびIT部門に利益をもたらす組織を支援するために設計された貨物管理プラットフォームの開発企業です。同社の貨物管理プラットフォームは、請求書の検証を管理し、キャリア全体で価格、品質、パフォーマンスを比較し、組織がパフォーマンスを継続的に監視できるようにします。累計の資金調達額はおよそUS$900Kとなっており、フォーラムにご登壇頂いたSP Venturesも投資家として名を連ねます。

ブラジルの物流・貨物市場の概況

同社によると、ブラジルの物流・貨物市場は世界第六位の取扱額で、ブラジルのGDPのおよそ4.6%(US$78B規模に相当)にのぼります。配送業者数は30万を超えているそうです。Lupeonは、年間約US$26Bの事業を行う「荷主」を市場のメインプレイヤー兼オポチュニティーの在り処として着目しました。農業大国ブラジルでは、複数の品目で輸出量世界一を誇りますが、生産して、売買契約をしても、「物が届いてナンボ」です。アグリテック等の恩恵も受けて生産量がさらに増える事となれば、ブラジルの物流・貨物市場は自然に拡大するでしょう。さらに、Eコマース市場の伸びという追い風もあり、向こう数年間は、ブラジルの物流業界も顕著な伸びが見込まれるでしょう。

物流業界の非効率性|”頑張る”割に成果を生まず、褒められもしない

ブラジルに限らず、物流業界においては、「多くのステイクホルダーが介在し、さらに関連書類なども山積み…正確に照合せねば…しかし注文は続き…納期は守らねば…」といった万国共通の悩みがあり、常にプレッシャーを抱えながらの人海戦術を強いられています。そのスキームは、下図に集約されるでしょう。日本でも、物流業者の労働負担が社会問題化していますが、オンラインショッピングの発展と逆行してしまっています。また、各企業の物流部門にも同じ論理が当てはまります。とある食品メーカーを例にとると、物流部門では「肉体的・精神的に苦労する割に、納期通りに納めて当たり前」で、一方で残業問題で関係当局から指摘を受けるなど、八方ふさがり。なおかつ、ベテランになればなるほど、「複雑なプロセスはしょうがない」という常識が染みついてしまっています。業務プロセスの改善に取り組むも、抜本的な効率化には結びつかないケースも多いようです。

物流業界の典型的で非効率なスキーム(イメージ図)

シームレスな物流業界の実現へ|Lupeonが提供するソリューション

上記の「痛み」を解決すべく、Lupeonが提供するソリューションは非常に明快です。同社のプラットフォーム上で、物流に関するあらゆる書類を一元管理し、照合作業なども極力自動化し、「人が無駄に頑張らなくてもいい」仕組みを提供しています。

Lupeonが提供するソリューション(イメージ図)

数字で見るLupeon

上記のソリューションによる貢献度は、数字にも顕著に表れています。2019年度には、ブラジルの3州で20以上の業界、1,200以上の荷主と取引しました。金額ではおよそUS$175M相当の運送料、US$9.5B相当の貨物にものぼります。同社の売り上げも、2016年対比で約30倍に成長しています。主要な顧客は下図の通りです。前述の通り、農業やEコマース市場の成長に沿って、Lupeonの出番もますます増える事でしょう。

Lupeonの主要な顧客群

Lupeonの次なる戦略|南米市場開拓と金融サービス強化

今後の成長戦略として、大きく二本の矢を目論みます。一つは、南米市場開拓。ブラジル国内では、パラナ州、ミナスジェライス州、リオグランデドスル州などで営業を強化し、ブラジル企業のアルゼンチン、チリ、コロンビア、ペルーなどの南米事業へのサービス提供も推進したい考えです。この経験を踏まえて、各国のローカル企業へとアプローチする狙いがあります。先でも紹介しましたが、物流業界の悩みは万国共通であることから、Lupeonの汎用性の高いサービスは、他国でも受け入れられやすいと言えるでしょう。

二つ目は、金融サービスの強化。例えば、荷主は、納品までのリードタイムにより、キャッシュフローの回転が比較的遅いために信用も下がり、融資を受けにくく、結果的に高利貸しに頼らざるを得ない状況に苦しみます。そこで、Lupeonは試験的に融資サービスも提供しました。12件の運用では、全体の売上高のおよそ4.5%にあたる収入を上げ、債務不履行はゼロでした。

Lupeonは南米市場展開を6割、金融サービス強化を4割という比率で事業を推進していく計画だそうです。

おわりに

「苦労する割に称賛されることもなく、一方で納期を守れないなど齟齬があれば叱責される」という苦い歴史を歩んできた物流業界。一方で、Eコマースなど、ビジネスが発展していく上で、今後も物流が担う役割はますます拡大していきます。テクノロジーの力で、物流のステークホルダーの痛みを和らげるLupeonのソリューションは、ブラジルのみならず、万国で展開可能と言えるでしょう。さらに、物流という枠に収まらず、金融分野も併せてビジネスモデルを発展させていく点は興味深いものです。ブラジル外の市場でどのような活躍を見せるか、引き続きLupeonに注目です。

Abreu氏の紹介

LupeonのCEO。ブラジルのIT企業で計9年間、開発マネージャーなどを歴任。物流に関わる新たな決済フローの策定や、市場の規制要件への対応、顧客ベースの新しいモデルへの移行、および運送業者とのパートナーシップなどに従事。サンパウロ連邦大学の経済学部卒。

示唆に富んだ貴重なご講演を有り難う御座いました!

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